更年期医療について

気がついたら、半年以上もアップしていませんでした院長コラムですが、忘れていた訳ではありません。
ネタが無かった訳でもなくて、日々の診療を楽しみながら、クリニックの進路を考え未来を妄想していました。

令和7年1月7日に医療法人社団 沢岻美奈子女性医療クリニックとなり、6月からは内科・婦人科クリニックへと生まれ変わります。ここ神戸のクリニックは2013年1月の誕生から13年目ですが、今年の秋には分院となる東京・恵比寿に更年期を専門としたクリニックを作るために準備中です。

久しぶりにwebメディアから更年期に関する取材を受けましたので、現時点での私の更年期医療への胸熱な想いを、ここのコラムでも共有しておきますね。

Q1 そもそも更年期障害とはどのような病気なのでしょうか?
  発症の原因や発症しやすい人の特徴、主な症状についてご教示ください。

更年期とは、女性ホルモンの減少する50歳前後の数年間を言います。
その時期に日常生活を送る上で、様々な心身の不快な症状が起きて、家庭生活や仕事や人間関係に支障が出たり、好ましくない影響が及んでしまう状況を、更年期障害と言います。
女性ホルモンが揺らぎながら減っていくことが一番の原因ですが、女性ホルモンは子宮や卵巣などの女性性器はもちろん、関節や皮膚だけではなくて、脳やメンタルにも関係しているので、様々な更年期症状に繋がっていきます。
女性なら誰でも更年期のホルモン変化は経験しますが、症状が人によって異なるのは、その方の性格や生活社会環境、人間関係など50年近くも生きていれば同じ人はいないからです。
ホットフラッシュはよく知られた症状ですが、日本人女性で一番多いのは、実は肩こりという調査があります。最近では手関節の強張り・メノポハンドや、デリケートゾーンの乾燥による性交痛も広い意味での更年期症状です。
睡眠の質の低下や、漠然とした不安感、疲労感が強くて、やる気が出ないなどの症状の方も、多く受診されています。

Q2 更年期障害と見られる症状が出た場合、医療機関を受診すべきなのでしょうか。

家庭生活や、仕事の効率などに、すでに影響が出ている場合には、早めの医療機関受診がいいと思います。
出産年齢が上がり、更年期世代でも子育て真っ最中の方、自身の仕事もあり、家族の世話もしながら、親の介護も加わり、自分自身のケアは後回しになり、我慢を重ねた結果、へとへとになってやっと婦人科を受診する方を多く診ています。
更年期世代になると、すでに血圧や糖尿病などの持病があり、かかりつけ医がある方は、ご自分の症状が更年期かどうか?主治医に聞いてみるのも良いでしょう。
しかしまだまだ医師の中にも、更年期で辛いのはただ怠けているだけ、とか、気のせいでしょう、と理解の少ない方もいるのが現実ですので、更年期治療に詳しい産婦人科クリニックを受診するのが、適切な治療への近道かと思います。
産婦人科の中でも、更年期などの女性のヘルスケアを専門としている医療者の集まりである「女性医学学会」で、お近くの専門医を探してみるものいいでしょう。

Q3 更年期障害をできるだけ予防する方法はあるのでしょうか?
  それとも、発症は避けられないのでしょうか?
  予防法や対処法がございましたらご教示ください。

予防の一番は、更年期は女性なら誰にでもやってくるホルモンの変動の時期と言うことを知って、備えておくことでしょう。
自分の体力や性格に合った、適度な運動習慣を持っておくこと、ストレスを溜めすぎない生活を普段から送ること、気のおけない交友関係があること、女性としての多くの役割の中でも、自分自身を一番に労わるというセルフケアの気持ちで日々を過ごすことで、症状が重たくならずに、上手に更年期を乗り切っている女性もいます。
周りの更年期症状の辛い女性と比べて、自分の症状はまだ軽い方だからと、受診をためらったり、受診しても、もっとキツくなるまで治療は我慢します、とおっしゃる女性もいます。
更年期の治療において私が大切にしている事は、自分と他人と比較するのではなくて、その方らしい生活を送れるように生活の質・QOLを保つための治療の選択肢をいくつかお示しして、一緒に考える事です。
女性ホルモンに影響を受けていた人生の前半から、更年期を乗り切った先の、
ホルモンに揺らがない人生の後半に向けて、いかに軽やかに自分らしくシフトできるのか?答えは一つではないので、とことん悩んでいいと思います。
初潮を迎えてから、男女の差を意識した生活が当たり前の環境で生きてきましたが、更年期=女性性の喪失ではなくて、男女差のない、無邪気で素直な幼い頃の自分に戻るイメージです。
ただ単に更年期=リセットではなくて、積み重ねた経験の先にある、自分らしさを楽しみながら、深みのある後半戦に辿り着いて欲しい思いです。

婦人科系の病気で、自然閉経になる前に卵巣機能を失う場合もあります。
例えば手術で卵巣を摘出する、抗がん剤治療で卵巣機能を失うなどです。
そういう場合もホルモン補充療法や、漢方治療などで、症状をやわらげる方法はあるので相談してください。

病院を受診するほどでもないな、とか、忙しくて時間がない方は、薬局で薬剤師さんに相談するのもいいと思います。更年期治療でよく使う漢方のほとんどは薬局でも購入できます。病院ほど緊張せずに相談できますし、軽い症状のうちに早めに楽になる方法だと思います。
しかし、お薬やサプリメントの飲み過ぎが、実は不調の原因になっている方も少なからずいますので、漫然と飲み続けるのはお勧めしませんし、勧められて飲んだ漢方やサプリメントで調子が回復しない場合は、医療機関での相談がいいと思います。

Q4 更年期障害は女性に多い病気のイメージがありますが、男性も発症することがあるのでしょうか?

女性の更年期ほど知られていませんが、男性にも男性ホルモンの低下による男性更年期はあります。
女性ホルモンが50歳前後で急激に減少するのに比べて、男性ホルモンは徐々に低下するので、個人差が大きいようです。
集中力の低下や、性欲の低下、鬱っぽくなったり、倦怠感など、何となく不調
として現れるため、年齢的変化だね、とかうつ病かな?と誤解される場合もあります。
診断するには、男性ホルモンの値を測定して、必要な方にはホルモン補充療法が効果的です。
男性ホルモンは、男女ともに「生きる意欲」に必要なので、更年期を過ぎた女性で、意欲の低下が強い方には、少量の男性ホルモン補充で元気を取り戻す方もいます。